君の名は。 新海誠のこれまで簡易まとめ
1.新海誠と別れ
新海誠作品では様々な方法で男女を引き裂いてきた。
「ほしのこえ」→地球と宇宙
「雲の向こう、約束の場所」→戦争、平行世界、3年の眠り、記憶喪失
「秒速5センチメートル」→距離、男女がお互いに好き合うことなんて滅多にない
「星を追う子ども」→死別、地上と地下
「言の葉の庭」→先生と生徒
「君の名は。」では「雲の向こう~」、「秒速~」、「星を追う~」の一部モチーフを意図的に再利用している。過去の新海作品という1本1本の糸が合わさり「君の名は。」ができている。
2.新海作品は童貞が観るアニメ
「言の葉の庭」より前の新海作品は昔から「童貞が見るアニメ」「童貞の妄想」などと揶揄されてきた。
これを解決しようとして「星を追う~」では主人公を童貞ではなく妻と死別した中年男と少女にしたが、1作品で2人の話をうまく解決できず失敗し、新海誠作品で最も評価が低くなってしまった。
次の「言の葉の庭」でやったのが「コミュ力あるイケメン男子高校生」である。
これが上手くいき「童貞が見るアニメ」をめでたく卒業。女性からも支持を得た。(主人公に感情移入できなくなった童貞シンパの半分くらいは花澤香奈で上手くごまかされた)
よって「君の名は。」でもイケメン高校生が採用された。
「言の葉の庭」以前の新海作品では主要キャラクター達のコミュニケーション能力が圧倒的に不足しており、表面的な情報のやりとりをするのみか、本音を喋っても一方的にぶつけているだけでキャッチボールができていなかった。
「言の葉の庭」のラストシーンにてようやく男女が本音をぶつけあうことにより、別れるとしても前向きなエンディングとなった。
(新海誠は「秒速~」も前向きなつもりで作っていたようだが小説版を読まずにそう受け取った視聴者は極僅かだと思う)
3.君の名は。
「言の葉の庭」で成功した「イケメン男子高校生」を主人公にして、「雲の向こう~」、「秒速~」、「星を追う~」のテーマをやり直したのが「君の名は。」である。
2つの世界に引き裂かれる男女・死別・死後の世界への境界と死者の復活・記憶の消失など、過去作品でのモチーフをイケメン男子高校生がなぞることにより全ての結果が逆転しグッドエンドとなった。※ただイケである。
テーマソングが「前前前世」であるが「君の名は。」の前前前作は「秒速~」である。「♪前前前世から君を探し始めたよ」そう、あの主人公は「秒速~」の主人公の生まれ変わりだったのだ。そうでも思っていないと童貞シンパとしてはあのラストシーンはやっていられない。
4.今後の予想
「童貞が観るアニメ」と揶揄されていた新海作品は一般に受け入れられるものとなったが、次はどうなるのだろうか。これまでの流れから考えて、過去作を客観的にとらえ、さらなる問題を解決する方向に進むだろう。
1.少女を主人公にできない
「星を追う~」では結局物語後半で主人公が中年男になってしまい、クライマックスでは少女はヒロインとなってしまった。
「君の名は。」も前半はダブル主人公のような演出だが、最終的に三葉はヒロインになってしまった。三葉がやったのは東京に会いに行ったのと父親を説得したくらいである。しかも後半は半分は瀧がやったようなものでありほとんどカットされている。
新海作品において少女は「状況に流されて主人公に助けてもらう存在」なのだ。
2.客層の乖離
これは些細な問題かもしれないが「秒速~」以前の童貞シンパと「言の葉の庭」以降の視聴層がかなり乖離している。このような場合、小説家や漫画家は著者名を変えるなどするが、時既に遅しである。
花澤香奈と使うとか、男女入れ替わりであるとか、過去作品のテーマの再利用など過去作ファンが喜びそうなネタで今後ずっとごまかし続けることができるのだろうか。
それとも切り捨てるのだろうか。